「そんなつもりじゃなかったのに、なぜか怒らせてしまった」
「良かれと思ってやったことが、最悪の『嫌味』だと受け取られた」
「私は普通にしているだけなのに『不機嫌なの?』と勘違いされる」
パートナーとの間で、こんな「すれ違い」を繰り返してはいないだろうか。
言葉の裏が読めない。 自分の表情が場にそぐわない。 そのたびに衝突し、疲れ果て、心がすり減っていく。
そして、最後にはこう思ってしまう。 「もう自分には、誰かと深い関係を築くなんて無理なんじゃないか」
こんにちは、ゴリアスです。
かつての僕も、まさにそうでした。この絶望的な孤独感こそが、発達障害の特性を持つ僕たちが直面する、最大の敵です。
僕には、忘れられない失敗があります。 当時付き合っていた彼女(現在の妻)は、掃除の担当を決めてきっちりこなすタイプでした。ある日、たまたま僕の手が空いたので、彼女の担当だった水回りの掃除を完璧にやっておいたのです。
感謝されるとすら思っていました。 しかし、帰宅した彼女は凍りつき、激しく僕を詰問しました。
「私がちゃんと掃除できてないっていう、嫌味なんでしょ!」
(そういう捉え方があるのか) ハンマーで頭を殴られたような衝撃でした。僕の「善意」は、彼女の世界では「相手の能力を否定する」という、最悪の「嫌味」として翻訳されていたのです。
またある時は、仕事で疲れて無表情でソファに座っていただけで、「何か怒ってる?」と決めつけられる。 「疲れてるだけだ」と返しても、「怒ってるじゃん! その顔!」と不毛な衝突が始まる。
こうした経験が積み重なるたび、僕の心には「自分だけがおかしいんだ」「一生、誰とも分かり合えないんじゃないか」という思い込みが、深く刻まれていきました。
もし今、あなたが同じように「なぜか伝わらない」という孤独の底にいるのなら、僕は声を大にして伝えたい。
それは、あなたが悪いのでも、おかしいのでもありません。 ましてや、よくある「性格の不一致」などで諦めるべき問題でもない。
ただ、あなたとパートナーが、お互いの「普通」があまりにも違う世界で生きてきたこと。 そして、その違いを乗り越えるための「技術」を、誰も教えてくれなかっただけなのです。
「性格の不一致」という“逃げ”を捨てる
僕たち夫婦の関係も、正直に言えば「破綻」寸前でした。 衝突を繰り返し、お互いに疲弊し、家の中の空気は凍りついていました。
「なぜ、分かってくれないんだ」「なぜ、そんなこと(嫌味)を言うんだ」
お互いが被害者であり、加害者でした。
僕たちがその沼から抜け出せたきっかけは、ある一つの「自覚」でした。 それは、「ああ、またダメだった」と自己嫌悪に陥るのをやめ、「この問題を放置したら、二人の関係は必ず破綻する」と強烈に自覚したことです。
これは、「私の性格」の問題ではない。 これは、「二人が乗り越えるべき、具体的な課題」だ。
この自覚こそが、関係を立て直すための絶対的なスタートラインでした。 多くのカップルは、このすれ違いを「性格の不一致」という便利な言葉で処理し、思考停止してしまいます。
でも、僕が直面していた問題は「性格」ではありませんでした。 それは「仕様」と「運用ルール」の問題だったのです。
恋愛こそ「意志」ではなく「設計」で乗り越える
ここで、僕の核となる思考原則が登場します。 「継続は『意志』ではなく『設計』である」
僕は、根性や気合といった精神論(意志)で物事を解決しようとすることを、発達障害やうつ病の経験からきっぱりと諦めています。
それは、恋愛や結婚という、最も感情がカオスになる領域でも同じでした。
「相手の気持ちを察することができるようになろう(意志)」 「もっと我慢強くなろう(意志)」 「相手を変えよう(意志)」
これらすべてをやめました。 「意志」の力で自分や相手をねじ伏せるのではなく、お互いが無理なく関係を継続できる「仕組み(設計)」を作ることに集中したのです。
僕が「破綻寸前」から関係を再構築するために行った「設計」は、たった3つのステップでした。
すれ違いを「資産」に変える3つのステップ
僕のもう一つの核となる原則は、「経験はすべて『資産』になる」です。 コミュニケーションにおける最悪の「失敗」や「すれ違い」こそ、二人の関係性を強化するための、最も価値のある「資産」の原石です。
その原石を磨き上げ、「最強の絆」に変える技術が、以下の3ステップです。
ステップ1:感情の嵐が過ぎたあと「分析」する
喧嘩や衝突の直後はダメです。お互いが冷静になったタイミングで(僕らの場合は翌日の夜など)、テーブルにつきます。
ここで絶対にやってはいけないのが「犯人探し」。「どっちが悪いか」を決めた瞬間、分析はただの泥沼になります。
目的はただ一つ、「問題の特定」。 「なぜ、これが起こったのか?(Why)」「どの瞬間に、すれ違いが始まったのか?(Where)」「具体的に、何が問題だったのか?(What)」
例えば、「ゴミ出し」問題。 妻が「ゴミ出しといてね」と言い、僕が「うん」と答えた。しかし翌朝、ゴミは出ていない。 分析の結果、妻は「(明日の朝だから)今日の夜までに」という暗黙の前提で話し、僕は「(今度)やっておく」という認識で受け取っていた。
問題は「どっちが悪いか」ではなく、「タスクの【期限】についての定義がズレていたこと」でした。
ステップ2:「二人だけのルールブック」を作成する
「原因」が特定できたら、次が最重要です。 二度と同じことが起こらないための「対策(ルール)」を、二人で決めるのです。
「仕様」は変えられません。だから「運用ルール」を上書きするのです。
例えば、僕たちが実際に作り上げた生々しいルールには、こんなものがあります。
- ルール1:「察してほしい」の全面禁止妻が「ため息」や「不機嫌な態度」で自分の状態をアピールし、僕に気づかせようとする行為は「解読不能なノイズ」であると合意しました。 疲れたら「疲れた」、構ってほしければ「構ってほしい」と、自分の状態を「言語化して伝える」ことを、お互いの「義務」としました。
- ルール2:依頼は「いつまでに」「何を」を明確に前述の「ゴミ出し」問題の対策です。曖昧な依頼は禁止。「今日の21時までに、ゴミ出しをお願いします」と、タスクと期限をセットで伝える。重要な依頼はLINEでテキストとして残す。これで「言った・言わない」は物理的にゼロになりました。
- ルール3:「無表情」への対処法を決める僕が疲れて「無表情」になっている時、妻は「あなたは怒ってる!」(Youメッセージ)と決めつけるのを禁止しました。 代わりに「私は、今あなたが黙っていると、『怒っているのかな?』と私が不安になる」と、自分を主語(Iメッセージ)にして状態を伝えるルールにしました。これで不毛な争いはなくなりました。
ステップ3:お互いの「仕様書」をすり合わせる
ルールを作っても、すぐには機能しません。 なぜなら、定型発達側の妻にとって「察してもらえない」ことは、「大切にされていない」と感じるほどの強烈な孤独(カサンドラ症候群の入り口)だからです。
僕も「なぜ私だけが相手の言語を学ばなければならないのか?」と理不尽さを感じました。
ここからが、本当の「すり合わせ」です。 なぜ妻は「冷たい」と感じるのかを理解しようと努め(相手の文化の理解)、なぜ僕は「言葉」でないと分からないのかを説明する(私の仕様の開示)。
この泥臭い作業を、何十回、何百回と繰り返しました。
衝突は、「最強の絆」の始まり
ここまで読んでくれたあなたは、これがどれだけ「めんどくさい」作業か、よく分かったと思います。
でも、断言します。 この「めんどくさい」分析と対策の積み重ねこそが、他の誰にも真似できない、二人だけのリレーションシップ(関係性)を築き上げる唯一の道です。
衝突が起こるたびに、二人の「ルールブック」は分厚くなっていく。 そのルールブックこそが、僕たちの「絆」の正体であり、二人だけの共通「資産」なのです。
発達障害の特性は、なくなりません。 大事なのは、特性を「治す(意志)」ことではない。その特性を「二人で理解」し、その都度「対策(設計)」を立て続けることです。
衝突は、関係の「終わり」ではありません。 それは、二人がお互いを本当に理解し合うための、「最強の絆」の始まりなのです。
この「すれ違い」を「資産」に変えるための、僕たち夫婦の具体的な「分析」「ルールブック」「すり合わせ」の技術。その全てを詰め込んだのが、このたび出版した新しいKindle本です。
「もう誰とも分かり合えない」と泣いていた僕が、どうやって「言えば、必ず分かってくれる」という強固な信頼関係を「設計」していったのか。 その全記録を、本書にまとめました。
もしあなたが、パートナーとの「すれ違い」を「性格の不一致」だと諦めるのではなく、「二人で解くべき課題」として乗り越えるための具体的な「技術」を手に入れたいなら、ぜひ手に取ってみてください。
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「普通」に働けなくても、自分の経験を「資産」に変え、収益を生み出す「設計」は可能です。 メルマガで、その「もう一つの技術」についてお話ししています。