小説を書き始めたものの、結末が決まらない。
主人公も決まっている。書きたい場面もある。序盤は順調に書けたのに、物語をどう終わらせればいいのかわからない。
そんな悩みを抱えていませんか?
物語の終わり方を考えるのは、簡単ではありません。
感動的なラストにしたい。読者を驚かせたい。最後まで読んでよかったと思ってもらいたい。
そう考えるほど、何を書けばいいのかわからなくなることもあります。
そんなとき、僕がおすすめしたいのは、物語の最初に戻って考えることです。
僕が使っている物語の作り方には、「バッドスタートの反対がハッピーエンド」という考え方があります。
主人公が最初に抱えていた問題を、結末ではどのように変えるのか。
そこから考えると、物語の終わり方が見えてくることがあります。
今回は、小説の結末の決め方を、具体的な例とともに解説します。
結末が決まらないと、最後まで書けない理由
物語の序盤は、比較的自由に書けます。
魅力的な主人公を登場させる。事件を起こす。新しい人物と出会わせる。
面白そうなアイデアを次々に加えていけば、物語は動き出します。
ところが、途中から難しくなります。
次に何を起こせばいいのか。
この事件をどう解決すればいいのか。
登場人物たちをどこへ向かわせればいいのか。
その判断ができなくなってしまうのです。
原因の一つは、物語の到着地点が決まっていないことです。
たとえば、旅行に出かけるとしましょう。
目的地が決まっていれば、そこへ向かう道を考えられます。
ところが、目的地を決めないまま歩き始めれば、どちらへ進めばいいのか迷ってしまうでしょう。
物語も似ています。
もちろん、結末を決めずに書き進める方法もあります。
書いている途中で新しい展開を発見し、そこから結末へたどり着く作家もいるでしょう。
ただ、途中で何度も手が止まってしまう人には、先に結末を考える方法が役立つかもしれません。
ここで大事なのは、結末を細かく決める必要はないということです。
最後の台詞まで考えなくても構いません。
まずは、主人公が最後にどんな状態になっているのかを決める。
それだけでも、途中に必要な出来事を考えやすくなります。
このように物語の道筋を整理する作業を、プロット作りと呼びます。
プロットの基本から知りたい人は、小説のプロットの作り方を解説した記事も参考にしてください。
ハッピーエンドとは「バッドスタートの反対」のこと
僕が物語を作るときに重視しているのが、始まりと結末の関係です。
「バッドスタートの反対がハッピーエンド」
これは、物語の最初と最後を対応させる考え方です。
バッドスタートとは、主人公が何らかの問題や弱点を抱えている状態です。
必ずしも、不幸な事件から物語を始めるという意味ではありません。
人を信じられない。
自分の気持ちを伝えられない。
失敗を恐れて挑戦できない。
誰にも助けを求められない。
そうした主人公の弱点や欠落が、物語の出発点になります。
では、その反対にあるハッピーエンドとは何でしょうか。
たとえば、こんな変化が考えられます。
- 人を信じられなかった主人公が、最後には誰かを信じる
- 自分の気持ちを伝えられなかった主人公が、大切な言葉を口にする
- 失敗を恐れていた主人公が、結果を恐れず挑戦する
- 誰にも頼れなかった主人公が、自分から助けを求める
ここで重要なのは、主人公が幸運によって救われることではありません。
主人公自身が何かを選び、行動した結果、最初とは違う状態になることです。
具体的な例を考えてみましょう。
これは説明のために作った架空の物語です。
ある高校生は、人に頼ることが苦手です。
何でも自分でやらなければならないと思い込んでいます。
文化祭で演劇を上演することになっても、台本も演出も準備も、一人で抱え込もうとします。
ところが、公演直前に大きな問題が起こります。
自分一人では、どうにもできません。
ここで主人公は、初めて仲間に「助けてほしい」と伝えます。
仲間たちは協力し、公演を成功させます。
この物語のハッピーエンドは、単に文化祭の舞台が成功することではありません。
最初は人に頼れなかった主人公が、最後には自分の意思で助けを求められるようになったことです。
そこに、物語の変化があります。
仮に文化祭の公演が失敗したとしても、主人公が誰かを信じて力を合わせられるようになったなら、本人にとっては希望のある結末になるかもしれません。
つまり、ハッピーエンドは必ずしも大成功や大金持ちになることではないのです。
もちろん、すべての小説がハッピーエンドである必要はありません。
悲劇やビターエンド、答えを読者に委ねる終わり方もあります。
ただ、僕が使っている20分割プロット法では、初心者が物語の到着地点を考えやすいように、バッドスタートからハッピーエンドへの反転を基本にしています。
最初に何ができなかったのか。
最後には何ができるようになるのか。
この二つを並べてみるだけでも、結末の方向性が見えてくるはずです。
結末から逆算する:20枚目のカードを先に決める方法
僕は、一本の物語を20枚のカードに分けて考える方法を使っています。
一枚のカードに、その部分で起きる出来事を書きます。
20枚を並べることで、物語の始まりから終わりまでを見渡せるようにするのです。
これが「カード式20分割プロット法」です。
この方法で、結末が決まらないときに試してほしいことがあります。
1枚目のカードと20枚目のカードを、先に並べてみてください。
たとえば、先ほどの演劇部の物語なら、次のようになります。
カード1:主人公は他人に頼れず、文化祭の準備を一人で抱え込んでいる。
カード20:主人公は仲間に自分から声をかけ、全員で舞台の幕を開ける。
この二つが決まったら、その間に何が必要なのかを逆算します。
主人公が最後に仲間を信じられるようになるためには、どんな経験が必要でしょうか。
最初は、仲間からの手伝いの申し出を断るかもしれません。
一人で頑張りすぎて、失敗するかもしれません。
誰かの助けによって救われても、素直に感謝できないかもしれません。
それでも最後には、自分から仲間に助けを求める。
そう考えると、途中に置くべき出来事が少しずつ見えてきます。
このとき、いきなり20枚すべてを完璧に埋めようとしなくても構いません。
まず、次のように書き出してみてください。
1. 最初の状態
主人公が抱えている問題や弱点を書く。
2. 最後の状態
その問題がどのように変わっているのかを書く。
3. 最後の行動
主人公の変化を、具体的な行動で表現する。
4. 最後の選択に必要な出来事
主人公がその行動を取れるようになるまでに、何を経験しなければならないかを考える。
たとえば、「人を信じられるようになる」という内面の変化だけでは、最後の場面が想像しにくいでしょう。
でも、「仲間に自分から助けを求める」なら、実際の場面を描けます。
主人公が何をするのか。
それを見せることが大切です。
また、20枚目には必ずしも最大の事件を置く必要はありません。
大きな対決や問題の解決は、その前に終わっていても構いません。
最後のカードには、事件を乗り越えた主人公の新しい姿を描くこともできます。
20枚目を仮に決めたら、そこへ至る道筋を考え、残りのカードを埋めていきましょう。
そして、20枚の地図ができたら、本編を書き始めます。
実際に文章を書いている途中で、もっと面白い展開が生まれることもあります。
そのときは、必ずしも最初の設計に縛られる必要はありません。
プロットは、物語を自由に書けなくするためのものではなく、迷ったときに戻れる地図なのです。
結末の逆算を含む20分割の設計を1冊にまとめたのが新刊です。
『物語が最後まで書けるようになる本』はこちらからご覧いただけます。
伏線の回収リストを作る(置いたものを回収する)
結末を考えるとき、もう一つ忘れてはいけないのが伏線です。
伏線とは、物語の前半などに置いておいた情報や出来事が、後になって重要な意味を持つ仕掛けです。
たとえば、主人公が最初に何気なく口にした言葉が、最後にはまったく違う意味を持つ。
序盤で登場した小さな道具が、最後に問題を解決するために役立つ。
こうした仕掛けがあると、読者は物語のつながりを感じやすくなります。
ただし、伏線を置いたこと自体を忘れてしまう場合があります。
序盤で意味深に登場した人物が、その後まったく登場しない。
主人公が大切そうに持っていた手紙が、結局何の役割も果たさない。
もちろん、すべての人物や小道具を結末で再登場させる必要はありません。
しかし、読者が「これは後で重要になるのでは」と期待するように描いたものは、何らかの決着を考えておきたいところです。
そこでおすすめなのが、伏線の回収リストを作ることです。
難しい表を作る必要はありません。
次の3つを書き出すだけで構いません。
- 置いたもの: 前半で登場させた人物、道具、言葉、約束、謎など
- 回収する場所: 物語のどの場面で意味を持たせるのか
- 回収の方法: どんな行動や出来事によって、その意味を明らかにするのか
たとえば、演劇部の物語なら、主人公が序盤で仲間から渡された手伝いの申し出を断る場面を置くとします。
そのときの主人公は「一人でできるから」と答えます。
そして最後には、自分から同じ仲間に「一緒にやってほしい」と頼む。
最初と最後で似た場面を描くことで、主人公の変化が伝わります。
このように、伏線の回収は意外な事実を明らかにすることだけではありません。
前に起きた出来事に、後から新しい意味を持たせることもできるのです。
逆に、回収できない伏線が見つかった場合は、必ずしも新しい場面を追加する必要はありません。
そもそも、その伏線が本当に必要だったのかを考えてみてください。
不要なら削る。
意味が弱いなら描き方を変える。
別の場面で自然に回収できるなら、そこへ移す。
そうした整理も、物語を完成させるためには重要です。
また、ミステリーや続編を想定した作品では、あえて謎を残すこともあります。
何でも説明すればよいわけではありません。
大切なのは、読者が追いかけてきた中心的な問題に、納得できる決着を用意することです。
よくある失敗:唐突な終わりと、終わった後の蛇足
結末が決まったとしても、実際に書く段階では注意が必要です。
特によくあるのが、唐突に終わってしまうことと、終わった後まで書き続けてしまうことです。
唐突な終わり方
たとえば、主人公が長い間、敵と戦っていたとします。
ところが最後に、突然現れた人物が敵を倒してしまった。
これでは、主人公が積み重ねてきた行動の意味が薄くなってしまいます。
主人公の問題を、作者の都合で解決してしまっているのです。
偶然や第三者の助けが物語に登場してはいけないわけではありません。
ただ、それまでの展開と結びついていなければ、読者は納得しにくいでしょう。
主人公が自分の意思で助けを求めた結果、仲間が駆けつける。
以前の行動があったから、最後に助けてくれる人が現れる。
こうした因果関係があれば、結末に説得力が生まれます。
結末を考えるときには、次のことを確認してみてください。
「この結末は、主人公がここまで経験してきたことの結果になっているだろうか?」
ここを確かめるだけでも、唐突な解決を避けやすくなります。
終わった後の蛇足
もう一つの失敗は、物語が終わっているのに、さらに説明を続けてしまうことです。
主人公が大切な決断をした。
長く続いた問題にも決着がついた。
読者の気持ちも、そこで一つの区切りを迎えた。
それなのに、その後の出来事を何ページにもわたって説明してしまう。
登場人物全員の将来を紹介したり、物語の教訓を長々と語ったり。
もちろん、後日談が必要な作品もあります。
しかし、読者がすでに受け取っていることまで説明すると、せっかくの余韻が薄れてしまう場合があります。
たとえば、演劇部の物語なら、主人公が初めて仲間に助けを求め、全員で舞台の幕を開ける。
そこで終わるのも、一つの方法です。
その後の舞台が大成功だったと説明しなくても、主人公の変化は伝わるでしょう。
むしろ、最後の一場面が読者の心に残るかもしれません。
僕は、物語の最後に残る印象的な一枚の絵も大切にしています。
最後に主人公がどんな姿を見せるのか。
その姿が作品のテーマと結びついていれば、言葉で説明しなくても伝わるものがあります。
結末を書くときには、何を書くかだけでなく、どこで書くのをやめるかも考えてみてください。
まとめ:小説の結末は、最初の状態から考えてみよう
小説の結末が決まらないとき、最後の場面だけを無理に考える必要はありません。
一度、物語の始まりへ戻ってみてください。
主人公は、最初に何を抱えていたでしょうか。
何ができなかったのでしょうか。
何を恐れ、何を望んでいたのでしょうか。
そして最後には、どのような姿になっていてほしいでしょうか。
その変化を考えることが、結末を作る第一歩になります。
僕がおすすめするのは、まず最初と最後を一文ずつ書き出すことです。
最初:主人公は〇〇ができない。
最後:主人公は自分の意思で〇〇をする。
この二つを並べ、なぜその変化が起きたのかを考えてみましょう。
途中で必要になる出来事や選択が、少しずつ見えてくるはずです。
まだ物語の中心がはっきりしていない場合は、ログラインの作り方と具体例を解説した記事も参考になると思います。
ログラインは、どんな物語を書くのかを1文で整理する方法です。
物語の中心を決め、最初と最後を考え、その間をプロットでつないでいく。
そうすることで、書き始めた小説を最後まで運ぶための道筋ができます。
もちろん、結末を決めたからといって、すべてが予定どおりに進むわけではありません。
書いている途中で、思いがけない場面や人物の行動が生まれることもあります。
それも、創作の面白さです。
最初に決めた結末が、唯一の正解というわけではありません。
それでも、帰る場所が一つあるだけで、迷ったときに進む方向を考え直せます。
最後まで書けずに止まっている小説があるなら、まずは主人公の最初の姿と最後の姿を並べてみてください。
その二つをつなぐ道を考えるところから、物語をもう一度動かせるかもしれません。