小説を書きたい。でも、プロットの作り方がわからない。
そもそもプロットって何を書けばいいのか。登場人物の設定を細かく決めることなのか。それとも、物語のあらすじを考えることなのか。
初めて小説を書こうとする人なら、そんな疑問を持つのも当然です。
僕はこれまで、脚本やボイスドラマなどの物語を制作してきました。その中で実践しているのが、物語を20枚のカードに分けて考える方法です。
これは、特別なソフトも、高度な文章力も必要としない方法です。
紙のカードでも、ノートでも、スマートフォンのメモ帳でも構いません。
大切なのは、頭の中にある物語を、実際に書ける形に整理することです。
この記事では、プロットの基本から、初心者でも取り組める具体的な作り方まで、順番に解説します。
読み終えたら、ぜひ自分の物語のカードを1枚書いてみてください。
プロットとは?あらすじ・構成との違い
プロットとは、簡単に言えば物語の設計図です。
主人公が何を望み、どんな出来事に遭遇し、何を選択して、どのような結末にたどり着くのか。
その流れを整理したものがプロットです。
よく似た言葉に「あらすじ」と「構成」があります。
この3つは関連していますが、考えるときの役割が少し違います。
あらすじは、何が起こる物語なのかを簡潔に説明したものです。
たとえば、
「閉店寸前のパン屋で働く青年が、仲間と協力して新商品を開発し、店を立て直す物語」
これだけでも、物語の大まかな内容はわかります。
構成は、出来事をどの順番で、どのように配置するかという考え方です。
冒頭で主人公の問題を見せ、中盤で困難を大きくし、最後に解決へ向かわせる。
こうした物語全体の組み立てを指します。
そしてプロットでは、さらに具体的に考えます。
- 主人公はなぜ店を立て直したいのか。
- 新商品を開発するきっかけは何か。
- 途中でどんな問題が起こるのか。
- 主人公はその問題にどう対処するのか。
- 最後に何が変わるのか。
つまり、あらすじが物語の全体像を伝えるものだとすれば、プロットは実際に物語を書き進めるための道筋です。
ただし、プロットに決まった書式があるわけではありません。
数行のメモで作る人もいれば、細かな場面まで決める人もいます。
僕がおすすめするのは、最初から細部を書き込みすぎず、物語全体を見渡せる設計図を作ることです。
プロットなしで小説を書き始めると途中で止まる理由
プロットを作らずに、頭の中のイメージだけで小説を書く人もいます。
もちろん、それで最後まで書き切れるなら問題ありません。
ただ、途中で筆が止まってしまう人には、プロットを作ることをおすすめします。
なぜなら、書き始める前に考えておくべきことを、執筆しながら毎回考えなくても済むからです。
たとえば、主人公が冒険に出る物語を書いたとしましょう。
最初は勢いがあります。
不思議な世界に迷い込み、仲間と出会い、敵に襲われる。
ところが、そこまで書いたところで手が止まります。
「次は何を起こせばいいんだろう?」
そこで新しい敵を登場させます。
敵を倒したら、今度は別の問題を起こします。
こうして出来事を増やしているうちに、何のための冒険だったのかわからなくなってしまうことがあります。
この問題を防ぐために、プロットが役立ちます。
主人公がどこへ向かっているのか。そのために何をする必要があるのか。
あらかじめ考えておけば、次の出来事を思いつきやすくなります。
もちろん、プロットがあれば絶対に途中で止まらないというわけではありません。
それでも、何を書けばよいかわからなくなったときに、戻れる場所があるのは大きな助けです。
プロットは、作者を縛るためのものではありません。迷ったときに、自分の物語の進む方向を確かめるためのものです。
プロットの作り方5ステップ|20枚のカードで小説を設計する方法
それでは、具体的にプロットを作ってみましょう。
今回は、僕が実践している「カード式20分割プロット法」を初心者向けに簡略化して紹介します。
手順は5つです。
ステップ1.物語を一文にする
最初に、どんな物語を書きたいのか、一文で考えます。
これを「ログライン」と呼びます。
僕は脚本家の大岡俊彦さんの作劇論から学んだ「AがBと出会いCする話」という考え方を使っています。
Aは主人公。
Bは主人公の日常を変えるきっかけ。
Cは、そこから生まれる行動や展開です。
たとえば、こんな物語を考えてみます。
「一人で問題を抱え込む若いパン職人が、祖父の残したレシピ帳を見つけ、仲間と新商品を開発して閉店寸前の店を立て直そうとする話」
まだ大まかな内容ですが、誰が何をする物語なのかが見えてきました。
この例を使って、続きを考えてみましょう。
ステップ2.主人公の最初と最後を考える
次に、物語の始まりと結末を考えます。
最初の主人公は、どんな問題を抱えているでしょうか。
最後には、何が変わっているでしょうか。
先ほどのパン職人なら、次のように考えられます。
- 最初:何でも一人で解決しようとして、周囲とうまく協力できない。
- 最後:仲間を信頼し、協力して問題を解決できるようになる。
これで、物語の始まりと終わりが決まりました。
このように、主人公の最初の悪い状態を、結末で反対の状態へ変える考え方があります。
僕の20分割プロット法でも、大切にしている部分です。
ステップ3.物語を4つの区間に分ける
次は、物語の全体構成です。
僕の方法では、三幕構成を基本にして、長くなりやすい第二幕を前半と後半に分けます。
すると、物語は4つの区間になります。
| 区間 | 主な役割 |
|---|---|
| 1〜5枚目 | 主人公の日常と、物語が動き出すきっかけ |
| 6〜10枚目 | 新しい状況での行動や対立 |
| 11〜15枚目 | 問題が深まり、主人公が重要な選択をする |
| 16〜20枚目 | 選択を行動に移し、結末へ向かう |
これは四幕構成という意味ではありません。
三幕構成の第二幕を、作業しやすいように二つに分けているのです。
パン屋の物語なら、
1〜5枚目:店の閉店が決まり、主人公が新商品作りに挑戦する。
6〜10枚目:商品開発に取り組むが、思うように売れない。
11〜15枚目:期限が迫り、一人では乗り越えられない問題に直面する。
16〜20枚目:仲間と協力して商品を完成させ、店の未来を変える。
このように考えられます。
まだ具体的な出来事が決まっていなくても構いません。
まずは4つの区間に、何が起こりそうかを書いてみてください。
ステップ4.それぞれの区間を5枚のカードに分ける
ここから、実際に20枚のカードを作ります。
最初の区間なら、カード1からカード5までを用意します。
カードには、起こる出来事を一文で書いてみましょう。
例えば、
カード1:「主人公は、仕事を一人で抱え込み、同僚とうまく協力できていない」
カード2:「店の売上が落ち込み、閉店の話が持ち上がる」
カード3:「主人公は、祖父が残した古いレシピ帳を見つける」
カード4:「主人公はレシピを再現しようとするが、失敗する」
カード5:「店主から最後の機会を与えられ、新商品開発に本格的に挑む」
これで、最初の5枚ができました。
同じように、残りの区間も考えていきます。
大事なのは、一つ前の出来事が、次の出来事につながっているかということです。
カード3でレシピ帳を見つけたから、カード4で再現を試みる。
失敗しても諦められない事情があるから、カード5で本格的な挑戦へ進む。
このように、行動とその結果をつなげていきます。
なお、20枚のカードは、20場面という意味ではありません。
一枚のカードから複数の場面が生まれることもあれば、複数のカードを一つの場面にまとめることもあります。
カードはあくまでも物語の流れを考えるための道具です。
ステップ5.20枚を並べ、出来事のつながりを確認する
20枚のカードを一通り書いたら、順番に読み返してみてください。
ここで確認してほしいことがあります。
- 主人公が何をしたいのか、途中でわからなくなっていないか。
- 出来事が偶然ばかりでつながっていないか。
- 同じ問題を何度も繰り返していないか。
- 主人公自身の選択によって、物語が進んでいるか。
- 最初の問題が、結末でどう変わったか。
途中でつながりの弱い場所があれば、カードを入れ替えたり、書き直したりして構いません。
たとえば、カード8で主人公が新商品を作ったのに、カード9では突然、別の事件が始まっている。
そんな場合は、カード8の行動によって何が起こったのかを考えてみましょう。
試作品をお客さんに食べてもらった。
ところが、思ったような反応が返ってこなかった。
では、その反応を受けて主人公はどうするのか。
こうして次のカードを考えれば、物語の流れをつなげやすくなります。
20枚が完成したら、すべてのセリフや描写を決める必要はありません。
物語の進む道筋が見えていれば、本文を書き始められます。
この20分割の型を一冊に体系化したのが、僕のKindle新刊『物語が最後まで書けるようになる本』です。
20枚を埋めるだけでなく、そのカードを使って実際の原稿を最後まで書くところまで解説しています。
プロットの転換点は5・10・15枚目に置く
20枚のカードを作るとき、特に意識したいのが5枚目、10枚目、15枚目です。
この3か所は、物語の流れが変わる重要な位置です。
カード5:第一幕のターニングポイント
第一幕から第二幕へ進むきっかけとなる、大きな転換です。
それまでの日常から、新しい問題や状況へ主人公が踏み込んでいきます。
パン屋の例なら、新商品開発に本格的に挑戦することを決める場面です。
カード10:物語の中間にあるミッドポイント
ミッドポイントとは、物語の中間に置く重要な転換のことです。
ここでは、それまでの出来事によって状況がどう変わったかを考えます。
パン屋の例なら、古いレシピを再現するだけではお客さんに選んでもらえないと気づき、商品の方向性を変えることが考えられます。
カード15:第三幕へ進むターニングポイント
第二幕で積み重なった問題を受けて、主人公が結末へ向かうための重要な選択をする位置です。
パン屋の例なら、期限が迫って一人では間に合わなくなり、主人公が仲間に助けを求める決断をする場面が考えられます。
ここで主人公の行動が大きく変わります。
ただし、5枚目、10枚目、15枚目に大事件を起こせばいいという話ではありません。
大切なのは、その出来事の前と後で何が変わったのかということです。
主人公の目的が変わる。
問題の意味が変わる。
それまでの方法が通用しなくなる。
新しい決断を迫られる。
そうした変化があることで、物語は次の段階へ進みます。
また、転換点以外のカードを軽く考えてよいわけでもありません。
その転換に至るまでの出来事がつながっているからこそ、重要な一枚が意味を持ちます。
小説のプロット作りでよくある3つの失敗と対処法
実際にプロットを作り始めると、思った以上に難しく感じることがあります。
ここでは、初心者が気をつけたい3つの失敗を紹介します。
失敗1.人物設定ばかり考えて、出来事が決まらない
主人公の名前、年齢、性格、家族構成、過去の出来事。
こうした設定を考えるのは楽しいものです。
しかし、設定がどれほど充実していても、主人公が行動しなければ物語は始まりません。
対処法は、人物設定を一度止めて、主人公が最初に何をするのかを考えることです。
最初のカードには、主人公の性格が伝わる具体的な行動を書いてみましょう。
失敗2.思いついた事件を並べるだけになっている
事件が次々に起こるのに、物語が前に進まない。
そんなときは、出来事の因果関係を確認してみてください。
たとえば、
「主人公が敵に襲われる」
「主人公が仲間と喧嘩する」
「主人公が宝物を見つける」
この3つを並べるだけでは、出来事同士のつながりが見えません。
そこで、
「敵に襲われた主人公が、仲間の判断を責める」
「その結果、仲間と喧嘩して別行動になる」
「一人で行動した主人公が、思いがけず宝物を発見する」
と考えてみます。
一つ前の出来事が原因となり、次の出来事が生まれる。
このつながりを意識すると、プロットが整理しやすくなります。
失敗3.プロットを完璧にしようとして、本文を書き始められない
20枚のカードを作る方法にも、注意点があります。
それは、カードを作ること自体が目的になってしまうことです。
何度もカードを並べ替える。
登場人物の設定を細かく修正する。
結末を考え直す。
それを繰り返しているうちに、いつまでも本文を書き始められなくなることがあります。
プロットは完成作品ではありません。
最初の20枚ができて、物語の大きな矛盾を点検できたら、いったんその状態を残して本文を書き始めましょう。
僕は20枚を一通り作り、執筆前の地図として残したうえで、本文を書き進める方法を使っています。
実際に書いてみると、登場人物が予想とは違う行動をしたり、より自然な展開を思いついたりすることもあります。
その場合も、必ずプロットどおりに書く必要はありません。
プロットは地図であって、絶対に守らなければならない命令ではないのです。
プロットの作り方を覚えたら、まず1枚目のカードを書こう
ここまで、プロットの意味と、20枚のカードを使った具体的な作り方を説明してきました。
最後に、一つだけ実践してみてください。
紙でもスマートフォンでも構いません。
次の文章を書いてみましょう。
「物語の始まりで、主人公は____している。」
ここには、主人公が今どんな状況にいるのかを書きます。
困っていることでも、悩んでいることでも、いつもの日常でも構いません。
まだ何も思いつかないなら、主人公が抱えている小さな問題から考えてみてください。
一人で仕事を抱え込んでいる。
大切な人に本音を伝えられない。
自分の居場所が見つからない。
そこから、主人公の日常を変える出来事を考えていきます。
最初から20枚すべてを埋める必要はありません。
まず一枚。
次に、その出来事を受けて何が起こるのかを考える。
そうして少しずつ、自分の物語の地図を作っていきましょう。
プロットの作り方を知ることと、実際にプロットを作れるようになることは違います。
この記事が、頭の中にある物語を形にする最初のきっかけになればうれしいです。