小説の中だるみの直し方|中盤で止まる原因は15枚目の転換点にある

小説を書いていると、最初は面白かったはずなのに、途中から何を書けばいいのかわからなくなることがあります。

事件も起こしている。登場人物も動いている。それなのに、どうも面白くない。

次の場面を考えても、似たような展開ばかりになってしまう。

いわゆる「中だるみ」です。

小説の中盤が書けなくなるのは、アイデアが足りないからとは限りません。

むしろ、物語の構造に問題がある場合があります。

僕は物語を書くとき、一本の作品を20枚のカードに分けて考える方法を使っています。

その中で特に重要なのが、10枚目と15枚目のカードです。

10枚目で物語の中間に変化を起こし、15枚目で結末へ向かう大きな転換を作る。

この二つを意識するだけでも、中盤の展開を考えやすくなります。

今回は、小説の中だるみが起こる原因と、途中まで書いた物語を立て直す具体的な方法を紹介します。

中だるみは「中盤に何も起きていない」サイン

小説の中だるみと聞くと、事件が少ないことを想像するかもしれません。

でも、実際には事件が次々と起きているのに、退屈に感じる物語もあります。

なぜでしょうか。

それは、出来事は起きているのに、物語の状況が変わっていないからです。

たとえば、行方不明になった兄を探す妹の物語を考えてみましょう。

主人公は兄の行方を知るために、友人を訪ねます。

しかし、何もわかりません。

次に、兄の勤め先を訪ねます。

そこでも何もわかりません。

さらに、兄がよく通っていた店を訪ねます。

やはり何もわかりません。

主人公は行動しています。

場所も変わっています。

新しい人物も登場しています。

ところが、物語はほとんど進んでいません。

読者からすると「それで、兄はどうなったの?」という疑問だけが残ります。

もちろん、手がかりが見つからないこと自体に意味を持たせることはできます。

しかし、同じような失敗が繰り返されるだけなら、次の展開への期待は弱くなってしまいます。

そこで考えてほしいのが、その場面によって何が変わったのかということです。

新しい事実がわかった。

主人公が何かを失った。

登場人物同士の関係が変わった。

これまでの目的では、問題を解決できないとわかった。

こうした変化があると、読者は続きを読みたくなります。

物語の中盤では、単に出来事を増やすのではなく、出来事によって状況を変えていくことが重要なのです。

小説の中だるみが起こる3つの原因

中だるみの原因はいくつも考えられますが、物語の構成を見直すときには、まず次の3つを確認してみてください。

原因① 主人公の目標が曖昧になっている

物語の最初には、主人公の目的があったはずです。

失踪した兄を見つけたい。

大会で優勝したい。

大切な人を守りたい。

ところが、中盤になると、その目的が見えなくなってしまうことがあります。

新しい登場人物の話が続いたり、主人公の日常を延々と描いたり。

もちろん、寄り道にも意味はあります。

しかし、主人公が何を目指しているのかわからなくなると、読者は物語の進行を感じにくくなります。

まずは「主人公は今、何を達成しようとしているのか」を一文で書いてみましょう。

原因② 対立が弱くなっている

主人公が何かを目指しているとしても、簡単に達成できるなら、物語はあまり盛り上がりません。

そこには、何らかの障害が必要です。

ライバルかもしれません。

時間制限かもしれません。

主人公自身の弱点かもしれません。

大切なのは、単に意地悪な敵を登場させることではありません。

主人公が望むことと、それを妨げるものがぶつかっているかということです。

対立が弱くなっているなら、主人公にとって何が一番困ることなのかを考え直してみてください。

原因③ 物語を変える転換点がない

三つ目は、転換点の問題です。

転換点とは、それまでの状況が大きく変わり、物語が別の方向へ進むきっかけになる出来事です。

たとえば、兄を探していた妹が、兄は誰かに連れ去られたのではなく、自分の意思で家を出たと知る。

これまでの捜索の意味が変わります。

なぜ兄は家を出たのか。

妹は兄を連れ戻すべきなのか。

新しい疑問が生まれます。

こうした変化がないまま、同じ目的に向かって同じ行動を繰り返していると、中盤が長く感じられることがあります。

三つの原因を整理すると、次のようになります。

  • 目標が曖昧: 主人公が何を目指しているかわからない
  • 対立が弱い: 目的を達成するのが簡単すぎる
  • 転換点がない: 状況が変わらず、同じ展開が続いている

中盤で書けなくなったときは、まずどこに問題があるのかを探してみましょう。

直し方:15枚目に「いちばん大きな転換点」を置く

僕が使っているカード式20分割プロット法では、物語を次の四つの区間に分けています。

  • 1〜5枚目:第一幕
  • 6〜10枚目:第二幕の前半
  • 11〜15枚目:第二幕の後半
  • 16〜20枚目:第三幕

基本は三幕構成ですが、長くなりやすい第二幕を前半と後半に分けて考えます。

そして、15枚目には、第二幕から第三幕へ向かうための大きな転換点を置きます。

ここで注意したいのは、15枚目が必ず作品全体で最大の事件になる必要はないということです。

重要なのは、15枚目を境に、主人公がそれまでとは違う行動を取らなければならなくなることです。

先ほどの、行方不明の兄を探す妹の物語で考えてみましょう。

主人公は兄の行方を追い続けています。

ところが、15枚目でようやく兄を見つけたとします。

普通なら、これで物語が終わりそうです。

しかし、兄はこう言います。

「家には帰らない。もう放っておいてくれ」

ここで状況が変わります。

主人公は、兄を見つけることには成功しました。

でも、兄を家へ連れ戻すという目的は達成できていません。

しかも、兄が自分の意思で家を出たことが明らかになりました。

主人公は、これまでと同じように兄を探し続けることはできません。

兄が帰りたくない理由に向き合わなければならなくなったのです。

これが転換点です。

大きな爆発も、激しい戦闘も必要ありません。

たった一言で、物語の方向が変わることもあるのです。

15枚目を考えるときには、次の問いを使ってみてください。

「この出来事の後、主人公は今までと同じことを続けられるだろうか?」

もし、何も変わらず同じ行動を続けられるなら、転換が弱いのかもしれません。

反対に、主人公が重要な決断を迫られるなら、第三幕へ進む理由が生まれます。

大きな失敗をする展開でも構いません。

予想外の成功によって、新しい問題が生まれても構いません。

主人公が何を失い、何を知り、何を選ぶのか。

そこを考えると、15枚目に置くべき出来事が見えてきます。

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10枚目の中間目標を見直す手順

15枚目の転換点が弱いと感じたら、もう少し前に戻ってみましょう。

見直してほしいのは、10枚目です。

カード式20分割プロット法では、10枚目を物語の中間点、ミッドポイントとして考えます。

ここで重要なのは、主人公が必ず何かに成功することではありません。

物語の前半で積み重ねてきたことが、後半へ進む理由になっているかということです。

たとえば、失踪した兄を探す妹の物語なら、10枚目で次の事実がわかったとします。

「兄は事故に巻き込まれたのではなく、自分の意思で家を出ていた」

この情報を知る前と後では、主人公の行動が変わります。

それまでは、兄がどこへ行ったのかを探していました。

ところが、今度は、なぜ兄が姿を消したのかを調べなければなりません。

そして15枚目では、兄本人に会うことができます。

しかし、帰宅を拒まれる。

10枚目と15枚目がつながることで、物語の展開が見えてきます。

10枚目を見直すときには、次の手順を試してみてください。

手順1:主人公がここまでに達成したことを確認する

最初に目指していたことは、どこまで進んでいるでしょうか。

成功したこと、失敗したこと、新たにわかったことを書き出します。

手順2:10枚目の前後で何が変わるのかを考える

目標が変わる。

障害が大きくなる。

新しい事実によって、これまでの出来事の意味が変わる。

どんな変化でも構いません。

大切なのは、後半へ進む理由が生まれることです。

手順3:15枚目で何を起こすかを考える

10枚目で生まれた問題や疑問は、15枚目でどう変化するでしょうか。

主人公が新しい事実を知った結果、どんな行動を取るのでしょうか。

その行動が成功することで、別の問題が生まれるかもしれません。

あるいは、失敗によって、それまで避けていた問題と向き合わざるを得なくなるかもしれません。

10枚目は、必ずしも明確な中間目標を達成する場面でなくても構いません。

新しい問いを生むだけでも、物語を後半へ動かす力になります。

ただし、何も変わらないまま10枚目を通り過ぎてしまっているなら、一度立ち止まって考えてみてください。

全文を書き直さず「カードの差し替え」で直す方法

ここまで読んで、こんなことを思った人もいるかもしれません。

「もう中盤まで書いてしまったんだけど、最初から書き直さなければいけないの?」

そんなことはありません。

中だるみの原因が物語の構造にある場合、まずはプロットの一部だけを見直してみましょう。

ここで使えるのが、カードの差し替えです。

20枚のカードを使っていれば、どこで物語が停滞しているのかを比較的簡単に確認できます。

たとえば、次のようなカードが並んでいたとします。

修正前

カード10:主人公は兄の友人を訪ねるが、手がかりがない。

カード11:主人公は兄の元同僚を訪ねるが、手がかりがない。

カード12:主人公は兄の行きつけの店を訪ねるが、手がかりがない。

カード13:主人公は兄の部屋を調べるが、手がかりがない。

カード14:主人公は兄の知人に連絡するが、手がかりがない。

カード15:主人公は兄を探し続ける。

これでは、なかなか物語が進みません。

そこで、いくつかのカードを差し替えてみます。

修正後

カード10:主人公は兄が自分の意思で家を出たことを知る。

カード11:主人公は兄が姿を消した理由を調べ始める。

カード12:兄が家族に言えなかった事情を知る。

カード13:主人公は兄の居場所につながる手がかりを見つける。

カード14:主人公は兄のいる場所へ向かう。

カード15:兄を見つけるが、本人から帰宅を拒まれる。

どうでしょうか。

主人公がやっていることは、基本的には兄を探すことです。

しかし、修正後は、途中で目的や状況が変化しています。

10枚目では、兄が自分の意思で姿を消したとわかる。

15枚目では、兄に会えたのに帰宅を拒まれる。

その結果、第三幕で主人公が何をしなければならないのかが見えてきます。

ただし、ここで大切な注意点があります。

すでに本文を書いている場合、思いつくたびに原稿を最初から書き直すことはおすすめしません。

それを繰り返していると、いつまでも完成しなくなることがあります。

僕は、本文を書き始める前に20枚のカードを一度すべて埋め、執筆用の地図として残しておく方法を使っています。

そして、実際の執筆中によりよい展開が生まれた場合も、元の地図を残しながら、まずは最後まで書くことを重視しています。

ですから、書きかけの小説を修正するときも、いきなり大量の文章を削除する必要はありません。

まず、今ある場面をカードに書き出してみてください。

次に、同じことを繰り返しているカードを探します。

そして、別の紙やメモに修正案を書いてみましょう。

修正案によって物語の方向が明確になるなら、その内容を今後の執筆に活かせます。

既存の場面との食い違いは記録しておき、初稿を最後まで書いてから改稿で整理する方法もあります。

まだ本文を書き始めていない段階なら、カードを差し替えて20枚全体を調整するとよいでしょう。

大切なのは、一つの問題を見つけたからといって、積み上げてきた原稿を全部捨てないことです。

中だるみの原因が、たった一つの転換点の弱さにある場合もあります。

何枚かのカードを見直すことで、書きかけの物語が再び動き出すかもしれません。

まとめ:小説の中盤が書けないときは、10枚目と15枚目を見直そう

小説が中盤で止まってしまったとき、無理に新しい事件を増やす必要はありません。

まずは、物語の中で何が変わっているのかを確認してみてください。

主人公の目標が曖昧になっていないか。

対立が弱くなっていないか。

物語を別の方向へ動かす転換点があるか。

特に、カード式20分割プロット法で考えるなら、10枚目と15枚目が重要です。

10枚目では、物語の中間に変化を起こす。

15枚目では、第三幕へ向かうための大きな転換を作る。

この二つがつながると、後半で主人公が何をするべきなのかが見えやすくなります。

そして、物語の中だるみを直すうえで、もう一つ忘れてほしくないことがあります。

それは、最後にどこへ向かう物語なのかを確認することです。

結末が曖昧なままでは、途中の出来事が必要なのかどうかも判断しにくくなります。

小説の結末を「最初の逆」から考える方法も紹介しているので、終わり方に迷っている人は参考にしてください。

中盤で止まったからといって、それまで書いた文章が無駄になるわけではありません。

主人公も、登場人物も、そこまでに起きた出来事も、そのまま活かせる可能性があります。

必要なのは、すべてを作り直すことではなく、物語がどこで止まっているのかを見つけることです。

今、中盤で止まっている小説があるなら、一度その部分をカードに書き出してみてください。

そして、10枚目と15枚目に何が起きるのかを考えてみましょう。

その二つの転換点が、最後まで書き切るための新しい道筋になるかもしれません。